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2013-11-22 無線 LAN の 2.4GHz 帯と 5GHz 帯の違いを法的視点から考察してみる

無線 LAN の 2.4GHz 帯と 5GHz 帯の違いを法的視点から考察してみる

まとめ

少し長いのではじめに結論書いときます。

(技適を始めとする各種認定・法令に準拠している機器を使用する場合)

  • 2.4GHz の無線 LAN は「有害な混信を容認しなければならない」という明文規定があるため、アクセスポイントの乱立で通信が混雑しても誰にも文句を言えない。文句を言われても無視する根拠がある
  • 5GHz 帯の無線 LAN はこの規定がないため有害な混信を容認しなくてもよいかもしれない。誰かに文句を言える可能性を残している
  • 「有害な混信を容認しなければならない」と規定されていても、進んで混信させるのはやめましょう(個人の感想)

もちろん、法令に違反するような出力で電波を飛ばして他の通信に影響を与えている場合は話が別です。

本文

すでに広く普及した無線 LAN (特に Wi-Fi) は5GHz 対応機器も増え、IEEE 802.11ac では 5GHz 帯のみになるなど 5GHz 帯への移行が進んでいます。 2.4GHz 帯との違いは割り当て帯域の差によるチャンネル数や、物理的特性の違いによる飛距離や透過性がありますが、ここでは日本国内での法的違いに絞って考察してみます。

2.4GHz 帯では IEEE 802.11b/g で使用する 1-14ch (2401-2497MHz) のすべてが ISM バンドに含まれています(総務省 我が国の電波の使用状況の一覧 PDF より)。ここでは詳細な解説はしませんが、ISM バンドとは産業・科学・医療用に使うために割り当てられた周波数帯域のことで、Bluetooth や Wi-Fi、ワイヤレスマウスなど多くの機器がこのバンドを使用しています。

ここでポイントとなるのが国内周波数分配の脚注 (PDF) で、2.4GHz 帯の無線 LAN が使用する 2400-2500MHz について「これらの周波数帯で運用する無線通信業務は、この使用によって生じ得る有害な混信を容認しなければならない」と定められています。つまり、2.4GHz 帯の無線 LAN を使う以上、アクセスポイントが乱立していたり、近くで電子レンジが稼働していたりして通信が遅くなったとしても、それを容認しなければならないと明文化されています。

J33 13553-13567kHz(中心周波数 13560kHz)、26957-27283kHz(中心周波数 27120kHz)、40.66-40.70MHz(中心周波数 40.68MHz)、2400-2500MHz(中心周波数 2450MHz)、5725-5875MHz(中心周波数 5800MHz)及び24-24.25GHz(中心周波数 24.125GHz)の周波数帯は、産業科学医療用(ISM)の使用に指定する。これらの周波数帯で運用する無線通信業務は、この使用によって生じ得る有害な混信を容認しなければならない。

例えば、大きなイベント会場などでモバイルルータやスマートフォンのテザリングを使用せず、主催者の用意したアクセスポイントを使用するように促されることがありますが、あれは本当にお願いレベルで、なんの拘束力もありません。参加者の持ち込んだ多数のモバイルルータによって通信が遅くなることがあっても、お互いに容認しなければなりません。ただ、あえて主催者のお願いに逆らう必要もないので素直に従っておくのが良いでしょう。拘束力はありませんが…。

一方 5GHz 帯の無線 LAN で使用される周波数は ISM バンドではありません。W52, W53, W56 のという3つのチャンネルブロックがあり、周波数帯はそれぞれ以下のようになっています。

  • W52
    • 5150-5250MHz (36,40,44,48ch)
  • W53
    • 5250-5350MHz (52,56,60,64ch)
  • W56
    • 5470-5725MHz (100, 104, 108, 112, 116, 120, 124, 128, 132, 136, 140ch)

上に引用した「有害な混信を容認しなければならない」周波数帯は 5725-5875MHz で、5GHz 帯無線 LAN のチャンネルとは重なっていません。ここが大きな違いです。5GHz 帯の無線 LAN については「有害な混信を容認しなければならない」とは書かれていません。アクセスポイントの乱立で通信速度が遅くなっている場合に、文句を言える可能性を残しているのです。これが実際に混信しているケースでどう役に立つかは不明ですが、法的にはこのような違いがあります。

ただし、5GHz 帯の無線 LAN は気象レーダーと周波数が重なっているチャンネルがあるため、屋外での使用が制限されていたり、気象レーダーが優先されて通信が遮断される可能性があります。